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気ままに短編小説を書いています。

ハナミズキが咲く頃(エッセイ)

四月の後半から五月の中旬にかけて、私が通勤で歩く道沿いはハナミズキの花で彩られる。

ハナミズキ名古屋市昭和区の区花だ。街路樹として植えられたハナミズキは、丸みを帯びた白い花を咲かせる。その花弁の様子が、空に向けて羽根を広げるようにピンと張っていて可愛らしい。そして、この時期の爽やかな青空に白がとても映える。私は満開のハナミズキを見ながら歩くことが好きだ。道沿いを白い花で飾るハナミズキは、見る者に凛とした空気を運んでくれる。

今年の春は、新型コロナウイルスの影響で誰しもが息苦しさを感じた。これから迎える大型連休に対して、例年の様な浮き立つ気持ちを抱える人はいないだろう。憂いの強い時勢だからこそ、季節の花に対して癒しを求めるように眼差しを向けてしまう。感染病が蔓延しても、植物はきちんと花を咲かす。毎年変わることなく、美しい花を見せてくれる。職場と自宅の往復を繰り返す毎日の中で、私は可憐なハナミズキの姿に見惚れると同時に、植物の生命力の逞しさに改めて感心する。ハナミズキ花言葉の中の一つに、「逆境に耐える愛」というものがある。「愛」なんて言葉は大袈裟だけど、今の私たちは、「耐える」ことを求められ、不自由な生活ゆえに、人と人との絆(これを愛と言い換えてもよいかもしれない)を再認識する時間を与えられたように思う。

凛と咲くハナミズキを見上げながら思う。どんなことが起きても、人の心の中の花も枯れない。今は雨風が強い時期だけど、きっと大丈夫。今しか出来ないことを見つけて、地に栄養を送れば更に美しい花を咲かせることが出来る。

朝陽を浴びながら見慣れた道を歩む。少し顔を上に向け、ハナミズキの甘くて優しい香り吸い込んで新しい一日が始まった。